人を批評したり、非難したり、小言を言ったりすることは、どんな馬鹿者でもできる。
そして、馬鹿者に限って、それをしたがるものだ。
理解と寛容は、優れた品性と克己心を備えた人にして初めて持ち得る徳である。
著:D・カーネギー 『人を動かす』 盗人にも5分の理を認める より
自己啓発の原点とも言われるデール・カーネギーの『人を動かす』より
人を動かす原則① 盗人にも5分の理を認める
に当てはまる事例をこのページに集めて考察する。
読者の皆さんがラグビーを通して対人関係の原則を学ぶきっかけになれば幸いだ。
盗人にも5分の理を認める を要約すると・・・
誰かをかっとなって怒鳴ったり正論をぶつけても、人は考え方や行動を変えようとはしない。
筋が通ろうと通ってなかろうと、自分を正当化できる理由を探して、自尊心を全力で守ろうとするのが人間の本質だ。
利己的に考えても、あなたのエネルギーの無駄使いだから批判や非難をするのはやめよう。
誰かを批判したくなったら、
「もし私がこの人と同じ心と身体、同じ環境で同じ経験をしたら同じことをしただろう・・・」
と同情して、対立しないように心がけよう。
盗人にも5分の理を認める エピソードから考察
ここからは主にラグビーの指導者や選手のエピソードから、人を動かす原則①に当てはまっていると感じたエピソードを紹介する。
帝京大学ラグビー部 岩出監督
全国大学ラグビー選手権で9連覇を達成した帝京大学。
圧倒的な強さの秘訣は、岩出監督の『体育会系イノベーション』と呼ばれる組織改革が一つの要因だろう。
岩出監督が就任から10年間、帝京大学は早稲田、明治、慶応といった伝統校にまったく勝てなかった。
厳しい練習をし、技術的なレベルを同じところまで伸ばしても、勝てない理由がある。
その勝てない理由こそ、岩出監督は根性論やトップダウン型の組織ではないかと考えた。
選手が状況を判断し、自ら考えて動けるチームこそ、勝てるチームだと。
その中で岩出監督は、怒るよりも気づきを与えるほうが有用だと気づいた。
岩出監督は、その著書『常勝集団のプリンシプル』で次のように書いている。
リーダーとしては、怒鳴って行動させる方がはるかに楽です。でも、楽をして変えさせた行動は、かりそめの行動変容であり、本物ではない。
『常勝集団のプリンシプル』岩出雅之 著
本書では掃除を率先してするようになるまでの経緯を紹介されているが、練習でも同じだろう。
「下手なら練習しろ!」と怒鳴る指導者や先輩はおそらくどこにでもいるだろう。
その結果、怒鳴られた彼らは怒られるのが嫌だからというぼんやりした理由でしぶしぶ練習をする。
誰も『自分が上手くなるための練習』という意識を持たなくなる。
そんな選手が増え続け、チームは勝てなくなり、また怒鳴られて、悪循環に陥る。
このようなことにならないためにも、怒鳴ったり、説教するのはやめておこう。
2015年W杯日本代表ヘッドコーチ エディー・ジョーンズ 1
2015年ラグビーW杯、日本代表は南アフリカ代表に劇的な勝利をした。
「史上最大の番狂わせ」と言われたその試合は、リアルタイムで見ていた当時の感動を今でも思い出せる。
その劇的勝利をもたらした日本代表ヘッドコーチ、エディー・ジョーンズの例を紹介しよう。
エディーの練習といえば、世界一ハードと称される練習を日本代表に課していたようだ。
おそらく、彼自身が現役時代からハードな練習も全力で取り組んでいたから、コーチになってからは選手に全力を求めたのだろう。
エディーは、「努力は100%のものでないと意味がない」という考え方を持っている。
だからこそ、選手によってはそりが合わないこともあった。
彼は若いコーチだった頃、100%の努力をしない選手が理解できず、一方的に怒って直そうとした。
その結果、彼が得た教訓は次のようなものだった。
今は昔ほど怒りません。怒ったところで、選手は直そうとしないからです。
『ハードワーク 勝つためのマインド・セッティング』エディー・ジョーンズ 著
これは私の想像に過ぎないが、エディーに怒られた選手はこう思ったことだろう。
「なんだこのコーチは?めんどくさいやつだなぁ・・・」
もちろん、エディーがその選手に求めるレベルが高すぎたのかもしれない。
しかし、ここで重要なことは、国代表レベルのコーチが選手を叱るのは無駄だと言っている事実だ。
現役時代のエディーほどの経歴をもってしても、怒りや説教では選手の考えを変えられない。
それなのに、世の中には怒鳴ってばかりの指導者や先輩がうじゃうじゃいる。
彼らはまだ、人間の本質を学ぶ機会を得ていない、あるいは本気でチームを強くしようという考えがないのだ。
自分の意見を聴いてもらいたいのなら、まずは相手の立場を理解し、同情しよう。
ちなみにこの本でエディーは、今では必要だと感じた時のみ、怒る演技をするとも書いている。
怒ることもコミュニケーションの1つとして使い分けているようだ。
2015年W杯日本代表ヘッドコーチ エディー・ジョーンズ 2
日本人指導者のいわゆる体育会系的な指導についてもエディーは言及している。
もし、指導者が選手に対して、「 お前はダメだ」と言い続ければ、その人は本当にダメになってしまいます。それが今まで、多くの日本のコーチがやってきたことではないでしょうか。
『ハードワーク 勝つためのマインド・セッティング』エディー・ジョーンズ 著
これは、指導者が選手に対して暗示をかけているような状態だと私は考えている。
選手の能力の枠を狭め、固定し、「俺はダメな奴だから練習してもこれ以上にはなれない」という暗示だ。
そんな暗示がかかった状態ではいくら練習しても、枠からはみ出ない程度にしか上手くならない。
イメージの自分に合うように下手な理由を探し、うまくいった事実は偶然だったと切り捨てるようになる。
もちろん、反骨精神で成長できる人間もいるだろう。
しかし、そんな反骨精神を持つ選手が一体何人いるのだろうか。
下手に踏みつけるような指導をするくらいなら、下手でも褒める指導のほうが、私はチームが強くなる可能性が高いと考える。
盗人にも5分の理を認める を実感してみよう
良かったらコメント欄などであなたの経験や意見を教えてもらえると大変うれしい。
それが私やあなた、このページを読んでいる皆様の成長に繋がるだろう。
第三者目線で、怒られた選手を観察する
きっと、あなたのチームにも一人くらい、怒られがちな選手がいるだろう。
その選手は怒鳴られた後、どういう行動をしているか観察してみよう。
- 彼は積極的にプレーできているだろうか?
- 冷静に怒られたことを受け止め、怒りも恐れもなく、すぐに修正できているだろうか?
- しばらくしたらまた同じミスを繰り返して、また怒られてはないだろうか?
- 怒られた選手は怒った選手に対してどういう感情を持っているか?
第三者目線だからこそ、冷静に状況を分析できるので試してみてほしい。
自分が怒られた時、どう感じ、何を考えたか記録してみる
あなた自身が怒鳴られた経験を詳しく書き出してみよう。
- あなたは怒った相手に反論、あるいは反感を抱かなかったか?
- 怒られたことをすぐに修正することはできたか?あるいはそもそも修正する気が起きなかったか?
- あなたが怒られたことで周囲の雰囲気はどうなったか?
- 怒った相手をひと言で表すと?
紙やスマホに書きなぐってみるだけでも、幾分冷静になることが出来るはずだ。
そうすれば、あなたは身をもって、「批判の無益さ」という知恵を得ることが出来る。
チームメイトがミスした時、万が一怒ってしまったらその後を観察する
万が一チームメイトを怒ってしまったら、その後のチームメイトの行動を観察してみよう。
怒った過去は消えないので、すぐに謝るか、後学のために観察したほうが将来的にお得だ。
- 彼は積極的にプレーできているだろうか?
- 冷静に怒られたことを受け止め、怒りも恐れもなく、すぐに修正できているだろうか?
- しばらくしたらまた同じミスを繰り返してないだろうか?
- 怒られた選手はあなたに対してどういう感情を持っていると考えられるだろうか?
身をもって経験した分、怒ることの無益さはよく理解できるはずだ。
盗人にも5分の理を認める まとめ
あなたの望みに、良好な人間関係とチームでの勝利があるのなら、今日から怒るのはやめよう。
そうすれば、あなたは人間関係の達人になる階段を1つ上がったことになる。
参考文献の紹介
ここでは参考にした本を紹介する。
1,000円ほどの出費と半日ほどの時間で、一生役立つ知識が1つでも得られるなら、コスパ◎だろう。
気になったものがあれば、試し読みだけでもしてみると得られるものがあるかもしれない。
※私はオーディブル版『人を動かす』をメインに聴いているので、少し内容が違う。
↓オーディブル版は原著翻訳、文庫版は改訂版翻訳
コメント